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<番屋>
  海岸線に沿うように、道路が走り、港がある。それが北浦漁港だ。道路にへばりつくように番屋が建っている。漁具小屋として使われているだけの番屋の窓に、鮭の身を干している「トバ」を見つけた。
 別の番屋では、大きな双眼鏡で沖を見つめる老漁夫の姿が時折、顔をだす。眼光するどく、たまに番屋の下を歩く我々の頭上から注がれる。
 私が、初めて北浦を訪れたときも、番屋のストーヴ修理の仕事であった。小さなテーブルの前に、車座に漁夫達が座り、一升瓶を立てて、魚をさばいて飲みながら話をしていたのを思い出す。当然、修理する側なので、視線は冷たかったし、相手の気も荒かったし、好印象ではなかった。使用上の注意なんていうのは通用しなかった。
 漁を終えた大事な息子達を迎える暖かい番屋が、寒かったのだから無理もない。今では、そう思うだけである。

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